日本人は歯周病で歯を失っています(歯を失う原因1位は歯周病)

日本人の歯を失う主な原因として、1位が「歯周病」で全体の約40%。2位が「むし歯」で全体の約30%となっています。そして、日本人の成人の80%程度が何らかの歯周疾患にかかっているといわれています。


歯周病は悪玉細菌による感染症

歯周病は歯周病の原因となる細菌による感染症です。歯周病菌は歯面にくっついてネバネバとした物質を作り出して「バイオフィルム」と呼ばれるバリアーのようなものを形成します。その中で歯周病菌はどんどん増殖して、「歯垢(プラーク)」となります。プラークは食べかすなどではなく、おびただしい数の口腔内細菌の集合体なのです。

歯周病は歯を支える骨を溶かしてしまいます

歯と歯茎の隙間に入り込んだ歯周病菌は、歯と歯茎のくっつきを剥がしていき「歯周ポケット」をつくります。歯周ポケットが深くなればなるほど、ブラッシングで清掃しずらくなるので、歯周ポケットの奥にプラークが残ってしまうようになるため、さらに歯周病菌は歯周ポケットを深くしながら奥へ奥へと入り込んでいってしまいます。歯周病菌は毒素を出して、歯を支える骨(歯槽骨)はその毒素や感染から逃げるようにだんだんと溶けていきます。歯槽骨の退縮が進むと、やがて歯を支えることができなくなり、歯はグラグラと動くようになり、やがて歯は抜け落ちてしまいます。


歯周病の検査方法

プロービング

歯周病の検査をするには、歯周ポケットの深さを測る「プロービング」というものがあります。プロービングでは、「プローブ」という器具を使用して、1本1本の歯の周りを数カ所ずつ、歯周ポケットの深さを計測します。計測結果は専用のシートに記録していき、どの歯のどの部分の歯周ポケットが深くなっているかを明確にして、治療計画を立てやすくします。

X線検査

歯槽骨の破壊の程度をX線による画像でも確認します。パノラマレントゲンやデンタルレントゲンなどがあります。CT撮影を行うこともあります。

細菌検査

歯周病の検査では細菌検査を行うこともあります。細菌検査ではどのような種類の細菌が、どのような割合で存在しているかが明らかになります。

口腔内写真

歯周病の検査では口腔内写真を撮影する場合もあります。口腔内写真では、歯茎の色なども記録できますので、治療が進むにつれての歯肉の状態の変化を確認しやすいメリットがあります。

歯周病の治療

TBI(ブラッシング方法の指導)

歯周病の治療に、ご自身で行う毎日のブラッシングは欠かせません。かといって自己流のブラッシング方法では、プラークの取り残しが発生しがちとなり、その部分は特に歯周病が進行してしまうといった事にもなりかねません。TBIでは、歯科衛生士が、薬剤でプラークを染め出し、正しいブラッシング方法をご指導させていただきます。

スケーリング・ルートプレーニング

スケーリングとは「歯肉縁上」といって、歯茎から上の見えている部分の歯石除去のことをいいます。手用スケーラーや超音波スケーラーという専用の器具を使用して、歯石を綺麗に除去します。
対してルートプレーニングは「歯肉縁下」といい、歯茎の下の見えていない部分の歯石除去のことをいいます。ルートプレーニングでは、処置を行う場所をいくつかのパートに分け、数回に分けて行います。痛みを感じないように麻酔をかけて行います。特に歯茎の奥にある歯石を放置すると、歯石にはプラークがつきやすくなるため、歯周病を進行させてしまうことになります。スケーリングとルートプレーニングで、可能な限り歯石を除去して、歯面をツルツルにしてプラークが付きにくい環境をつくることも大切なのです。

歯周外科処置

時に歯周外科処置を行うことも有効です。歯周外科処置(フラップ手術)では、麻酔をかけて歯茎を切開し、肉眼で目視しながら、歯茎の奥にある除去しにくい部分の歯石やプラークを除去します。

定期検診・メインテナンス

むし歯や歯周病は、歯の溝、歯間、歯周ポケットに付着する細菌によって引き起こされます。また、非常に多くの細菌が集まり、ネバネバとした物質=バイオフィルムを作り出し、その中で細菌は増殖します。バイオフィルムはバリヤーのように、お薬を跳ね返してしまいますので、お薬で口腔内を健康に保つことはできません。このバイオフィルムを除去するには、「機械的に除去する」以外に有効な方法がありません。
歯科医院での定期検診の際には、むし歯ができていないか、歯周病になっていないか、詰め物や被せ物が壊れたり取れていないか、歯磨きの磨き残しがないかなどを確認し、PMTC(プロフェッショナルケア=機械的なバイオフィルムの除去)で徹底的にクリーニングします。
定期的に歯科医院でメインテナンスを受けることは、歯を残すために有効であることが科学的に証明されています。

定期検診の主な内容

むし歯や歯周病のチェック

むし歯ができていないか、歯周病になってはいないか、詰め物や被せ物が壊れたり取れてしまっていないかなどを調べます。問題が見つかった場合は適切な処置を早めに受けることをおすすめしています。

セルフケアができているかの染め出しチェック

ご家庭での歯磨きで磨き残しがないかどうか、毎回プラークの染め出しをして調べます。

PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)

PMTCとは、
「P:プロフェッショナル=専門家による」
「M:メカニカル=専用の機械を用いた」
「T:トゥース=歯の」
「C:クリーニング=クリーニング」
の頭文字です。
自分では日々のブラッシングでプラークコントロールができているつもりでも、歯ブラシの届きにくい部分や、歯と歯のすき間、歯周ポケットなどには、磨き残しができていることが多いです。これを放っておくと、歯周病やむし歯、口臭、全身疾患などの原因となります。そのため歯科医院を定期的に受診し、プロによるクリーニングを受けることをおすすめしております。

一般的なPMTCの流れ

①.スケーリング

超音波スケーラーや手用スケーラーで、ご自身のセルフケアでは除去しきれない部分を含め、歯石やバイオフィルムを、歯科衛生士が専用の器具を使って徹底的にクリーニングします。

②.ペーストを塗布

ここで塗布するペーストは、歯磨き粉のようなもので、茶渋などが効率よく落ちやすくなります。

③.歯と歯の隙間を清掃

専用の器具を使用して、ブラッシングしずらい歯と歯の隙間をキレイにしていきます。

④.歯面のクリーニング

同様に専用の器具を使用して、歯面を清掃していきます。

⑤.歯面の磨き上げ・ツヤ出し

汚れを再付着しずらくするために歯の表面をツルツルに磨き上げます。
⑥.フッ素塗布

最後は歯のエナメル質を強くするフッ素を塗布します。

定期検診受診の間隔を提案・決定

ご自身によるセルフケアがどの程度しっかりできているか、現在の健康状態、歯周組織の状態などを総合的に判断した上で、むし歯と歯周病を予防するための最も適切な定期検診受診の間隔をご提案させていただき、問題が無ければ決定します。